「風に舞いあがるビニールシート」森絵都(文藝春秋)

風に舞いあがるビニールシート
 才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり……。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編を収録。第135回直木賞受賞作。(6月3日読了)


 読み始めてしばらくは、あれ、森絵都だよな? と確認すること数回。これまでの作品とは雰囲気がだいぶ違うように感じられたけれど、1話目の最後から裏切られました。もちろん、良い意味で。
 周囲に流されているようでいて、実は確固たる自分を持っている。そんな6人の主人公の物語が読めます。
 中でも特に、ニシユキについてと裕介の心情が、まるで謎解きのように紐解かれる「守護神」。テンポ良い会話とスピード感のある展開、爽快な結末と3拍子揃った「ジェネレーションX」がお気に入り。
 譲れない何かがあると、人って強くなれるんだなぁ。