「重力ピエロ」伊坂幸太郎(新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)
 春が二階から降ってきた。
 兄の泉水は、二つ下の弟である春、優しい父、美しい母との四人家族。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。グラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。そして、謎解きに乗り出した兄が直面する真実とは――。(5月31日読了)


 ミステリーではなくて、文学作品かな。これは。謎解きを期待すると、肩すかしを食らう。
 根底には重いテーマがあるにも関わらず、文中の台詞「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」の文字通り、飄々としたした感じで物語が進み、そのまま終わる。実は伊坂作品を“読む”のはこれが始めてで、劇場版「アヒルと鴨のコインロッカー」をDVDで観たきり。そんな自分としては、あの映画の雰囲気がそのまま文字に変換されているように見えた。
 最初から最後まで、地に足の着かないフワフワとした印象。

 あ、父さんも母さんもカッコイイ!