永遠な何か

 そんなものはない。

 *

 親というものは、遠い世代の世界観に生きているものだと思っていた。
 しかし、よくよく考え直してみると。
 自分と両親との年齢差は20歳程度。
 学生時代はともかく、社会に出てからは年齢差なんてものはあまり重要視されない。特に、ネットワークを介して人脈が広がるようになったり、さらには子供ができてからは親しくさせてもらっている相手との年齢差も開くばかり。
 10数年くらいの年の差も珍しくなくなった。
 そう考えると、両親と自分の世代はそう離れていないようにも思える。
 そしてその為か、両親たちが暮らす世界は、限りなく永遠に近い速度でゆっくりと流れているように錯覚していた。

 いつ行っても変わらない、両親。彼らが身を置く環境。世界。
 でも、そんな永遠の世界はなかった。

「風に舞いあがるビニールシート」森絵都(文藝春秋)

風に舞いあがるビニールシート
 才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり……。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編を収録。第135回直木賞受賞作。(6月3日読了)


 読み始めてしばらくは、あれ、森絵都だよな? と確認すること数回。これまでの作品とは雰囲気がだいぶ違うように感じられたけれど、1話目の最後から裏切られました。もちろん、良い意味で。
 周囲に流されているようでいて、実は確固たる自分を持っている。そんな6人の主人公の物語が読めます。
 中でも特に、ニシユキについてと裕介の心情が、まるで謎解きのように紐解かれる「守護神」。テンポ良い会話とスピード感のある展開、爽快な結末と3拍子揃った「ジェネレーションX」がお気に入り。
 譲れない何かがあると、人って強くなれるんだなぁ。

「プラ・バロック」結城充考(光文社)

プラ・バロック
 埋め立て地の冷凍コンテナから発見された、14体の凍死体。整然と並んだ死体は、誰の、どんな意図によるものなのか。神奈川県警機動捜査隊に所属する女性刑事・クロハは、虚無感と異様な悪意の漂う事件の、深部に迫っていく……。第12回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。(2009年6月1日読了)


 スピード感のある文章と、生活臭を感じさせない独特の雰囲気。近代的ハードボイルドというか。映像重視というか。
 私は最後まで好きになれませんでした。
 この作風や世界観が好きになれるのなら、評価も変わりそう。私としては、もっと登場人物に奥行きがある方がいいなぁ。
 物語中で、仮想現実世界でのやりとりも出てくるんだけど、全編を通して仮想現実世界でのできごとのように見えた。
 今風に演出を頑張った2時間刑事ドラマくらいに考えれば、十二分に楽しめたけど。

何となく本が読みたくなって

 ここ数日、その辺に転がっていた本を片っ端から読了してみた。
 後、視野内に残るのは、森絵都村上春樹森博嗣。視野外も漁ればいくらでも出てくるだろうけれど、とりあえず目につくところから片付けようと思って。

 で、目の前にある森博嗣λに歯がない」。
 これ、シリーズもののど真ん中じゃん。
 前作を読んだのが……何年前になるんだ? 物語としては、一応、1冊でも読めるかも知れないけれど、シリーズを通していろんな伏線がはられてるだろうし。
 ここはきっぱりと読み返したいところ。
 ぬー。
 読み返すのは全然いいんだけど、果たして、倉庫のどこに格納しているのか……。

「告白」湊かなえ(双葉社)

告白
「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」
 我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで恐ろしい計画と共に犯人である少年を指し示した。モノローグ形式で行われる「級友」「犯人」「犯人の家族」それぞれからの「告白」。それらが幾重にも連なり、真相に迫る。(2009年5月31日読了)


 全編を通して登場人物の手記で構成されている。初めはそれが読みづらくもあったが、物語に引き込まれてからは客観的な立場である読者の臨場感を上げていたと思う。
 それにしても、先生怖い。母親は強いってことなのかなぁ?
 さらに、後味が悪い。
 少年らの独壇場だった物語の大半よりも、最後の最後でほんの少し救われた気になれたのも怖い。

 後半に進めば進むほど、とってつけた感じがしないでもない。1章目だけだったら、リアリティのある悲しい物語で終わったのになぁ。
 主要人物3人以外も、もっと活躍(?)するのかと思った。

「重力ピエロ」伊坂幸太郎(新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)
 春が二階から降ってきた。
 兄の泉水は、二つ下の弟である春、優しい父、美しい母との四人家族。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。グラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。そして、謎解きに乗り出した兄が直面する真実とは――。(5月31日読了)


 ミステリーではなくて、文学作品かな。これは。謎解きを期待すると、肩すかしを食らう。
 根底には重いテーマがあるにも関わらず、文中の台詞「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」の文字通り、飄々としたした感じで物語が進み、そのまま終わる。実は伊坂作品を“読む”のはこれが始めてで、劇場版「アヒルと鴨のコインロッカー」をDVDで観たきり。そんな自分としては、あの映画の雰囲気がそのまま文字に変換されているように見えた。
 最初から最後まで、地に足の着かないフワフワとした印象。

 あ、父さんも母さんもカッコイイ!

そろそろ進路を決めなくてはなりません

 何がって、リュウのことですよ。
 今はまだ寒いけれど、もうすぐ、そのうち、近い未来には春が待ち受けていますから。


 といっても、進学だの受験といった仰々しい話ではなく。
 来年度分の習い事がね、申込みスタートというか、もうそろそろ締め切りになるかもしれない時期なんですよ。
 今、リュウは、週1回のヤマハ音楽教室に通っているんだけど、それ以上増やすのは、うちのキャパシティ的にちょっと辛いかもなぁ、と思いつつ。でも、他にもやらせてみたいこともあるんだけどなぁ、とか。そもそも、本人から新たに別のことをやりたいと言われたらどうしようか、とか。


 リュウのクラスメート(のママ)と話していると、どの子も週2、多いと3つくらいのペースで何かの教室に通っているんだよね。
 まあ、幼稚園は早いと11時に、遅い日でも14時前には終わっちゃうからなぁ。子供中心で1日のスケジュールを考えると、人によっては子供と過ごす時間を持て余すんだろうなぁ。
 遊びに行く予定をたてるのにも、○○ちゃんとこは火曜と金曜がダメ、△△君は月曜と火曜がダメで……といった具合に嫌でも情報が入ってきちゃうのさ。子供の間でも、誰が何教室で何をやっただの、誰は何ができるだの頻繁に話題にのぼっている様子。
 でもって、たいていは、友達の習い事を見た(聞いた)子供自身が両親におねだりして習い事を始める、というパターンが多いみたいでさ。
 リュウも友達の発表会といった類のものに呼ばれてお邪魔するたび、「私もやりたい!」と言い出しやしないかドキドキしてます(笑)。


 リュウの周辺でよく聞くのは、英語、ピアノ、バレエ、体操、水泳と、スポーツ全般。
 中でも、ピアノとバレエ率が驚くほど高いっぽい。ピアノはわかるけど、何故、バレエ? 流行ってるの? バレエとか全く興味無いし!(ええ、私がです(笑)。関係ないじゃん、と思われるだろうが、付き合う方の身にもなってください) 金がすげえかかるって聞くし!
 英語も、いまいち効果が無さそうだしなぁ。


 私が、リュウにやってもらいたいと思っているのは、音楽以外では、水泳と公文くらいかな。私自身、いろいろと習い事には通ったけれど、個人的に役立ったと思えたのはそのふたつくらいだから。
 習字(友達繋がりで私自身がやりたがったらしい(笑))とか長刀(何かの影響で(笑)剣道をやりたいと訴えたら、何故か、長刀道場に連れていかれた……)とか全く役に立ってないし、そんなに良い思い出もありませんよ?
 字は下手だし、落ち着きもないし、体力も筋力もないですから。
 あ、やったことはないけど、体操(新体操にあらず)なんかもいいかも。基礎体力と正しい姿勢と協調性が学べそうで!


 そもそも、そんなに習い事だの塾だの通わせる必要ないのでは? という噂もあるんですが。その通りなんですが。
 まあでも、自分自身がやって良かったと思うことはとりあえず薦めてみたいし、本人にやりたくないと言われればそこで終わる話。逆に、本人がやってみたいと主張した事柄は、可能な限りやらせてあげたいじゃないですか。
 自分が、両親にそうしてもらえたので、そのまま、子供にも受け継いでやりたいわけです。


 肝心のリュウ自身は、テレビから流れる金曜ロードショーなんかの今夜の映画は……なんてフレーズに反応して、「○○ちゃんは、木曜日、映画の日なんだよ。いいなぁ」なんてつぶやいていたり。一応、他の子の習い事を意識しているみたいです。でもって、「でも、リュウヤマハだもんね」と勝手に納得もしてる様子。
 一安心(笑)。
 しばらく、ヤマハだけでもOKかなぁ。


 てか、それ、間違いなく映画じゃなくて英語ですから。